革の経年変化/革を育てる
2017.09.25 Monday
ハンドメイドの革製品を製造販売しております【SHIN】代表兼職人の加來(かく)です。
今回は「革の経年変化」のお話です。
「経年変化」というのは読んで字のごとく「年月が経過していくうちにだんだん変化していく」ことです。
「エイジング」などとも言います。
革製品を持つことの楽しみの大部分が、まさにこの経年変化を楽しむということなのではないでしょうか。
普通の「物」というのは新品時が最も価値が高く、だんだん価値が下がっていくものですが、「革」「木」「真鍮」等の素材は使えば使う程「味」が出て愛着が湧きますよね。
中でも「革」というのは特に経年変化しやすいので、育てる楽しみがあります。
上の写真は左が新品で右が使用1〜2ヶ月程度のものですが、同じ革?というレベルで育ってます。
革の種類や使い方により育ち方にだいぶ差が出ますが、こうなるとかなり愛着が湧いてきます。
写真のキーケースで使用している革は、特に経年変化がしやすい「クロムエクセル」という革です。
(アメリカ/ホーウィン社製)
経年変化とは
- 艶が増す
- 形が変わる
- 色が変わる
というのが主な変化です。
艶が増すのは摩耗や圧力などにより、革の表面がツルツルになることによるもので、
さらに内部に含まれたオイルが表面に出てくることや、外部からのオイル(手の脂やメンテナンスオイル)により更に艶が出ます。
形が変わるというのは「角が取れて丸みを帯びてくる」とかお尻のポケットに入れておくとお「尻のカーブに沿って形が付く」など。
中に入れているカードの形が浮き出たりもしますね。
色の変化は主に紫外線の影響が強いです。ナチュラルカラーのヌメ革などは、日光浴させると一日で色がだいぶ変わります。
上の写真のペンケースはイタリア/ブレターニャ社の「アリゾナ」という革です。
もともと「シボ」(細かいシワ)がある革で左が新品、右が数ヶ月使用のものです。
艶が増し、色も若干ですが茶色系に変化しています。
最も経年変化が激しいのが「サドルレザー」(無染色のヌメ革)です。
左が生まれたて、右が逞しく成長した姿。
紫外線だけでなく、メンテナンス等も含めてこうなります。
ちなみに日光に当てているだけでもこれくらいの色にはなりますが、
日光に当て過ぎは逆に色が飛びますのでご注意ください(やや黄色みがかって薄くなるという感じです)
また、室内の蛍光灯の光にもわずかに紫外線が含まれていますので、
日光が当らないからといって革を放置しておくといつの間にか色が変わってしまいます。
写真はイタリア/バダラッシィ・カルロ社製「ミネルバボックス」のグリージオという色の革をセレクトした、
フラップウォレットのカスタムオーダー品です。
こちらも同様の革を使ったキーケース。
さてこれが同変化していくかを見てみましょう。
数ヶ月後、もともとつや消しに近い革でしたがだいぶ艶が出ています。
ボタンの「アタリ」も良い感じです。「アタリ」っていうのは内部にあるものの形が浮き出ることです。
そして最終的には…
意味がわからない変化です。
完全に色が変わっております。育て方により全てがこうなるというわけではないようです。
この革をお選び頂く方はこの変化がたまらないみたいです。
(ミネルバボックスのグリージオは飛び抜けて色が変わる革ですので、他の革はこんなに変わりません)
いかがですか?育て始めてみたくなってきました?
革好きの方は暇さえあれば、なでなでして少しでも成長させようとしてしまいます。
毎日が楽しくなりますよ。
経年変化のお話は次回にも続きますので、お楽しみに!